研究概要 |
Fbx2のホモログとして4つの遺伝子(Fbx6b/FBG2,Fbx30/FBG3,FBG4,FBG5)が明らかにされ、ファミリーを形成することが報告された。そこで、平成16年度は、Fbx2とそのホモログを比較解析した。その結果、Fbx6bはFbx2と比べて少し親和力が弱いものの、Fbx2と非常によく似た糖鎖結合特異性を持つことが判明した。しかし、組織における遺伝子発現は全く異なっていた。Fbx2はニューロンと精巣にのみ特異的に検出されたが、Fbx6bはほぼ全ての臓器・組織に認められた。Fbx30はFbx6bと75%の相同性を示し、その組織における発現もユビキタスであったが、糖鎖結合能は確認されなかった。FBG4とFBG5は高い相同性があり、別のサブファミリーを形成すると考えられた。ユビキチン・プロテアソーム系は蛋白質を特異的に分解する機構であり、Fbx2遺伝子欠損マウスの作製は、糖鎖依存的蛋白質分解機構の解析に有効な手段と考えられる。そこで、Fbx2遺伝子欠損マウスを作製し、その解析を行っているが、現在までのところ顕著なフェノタイプは確認されていない。この原因としてユビキチンリガーゼ遺伝子の重複が考えられる。上記知見を考え合わせると、N-結合型糖鎖を認識するユビキチンリガーゼは複数個存在し、その機能は各細胞において異なる可能性が示唆された。アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患において、神経細胞内に異常な蛋白質の凝集体が形成されることが知られている。最近の研究により異常蛋白質の多くはユビキチン化されていることが明らかにされ、神経変性疾患の共通の分子機構として、ユビキチン・プロテアソーム系の破綻がその主な原因の一つと想定されている。今後、糖鎖を認識するユビキチンリガーゼの詳細な機能解析により、これら疾患の病態解明や治療薬剤の開発に進展することが期待される。
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