研究課題
特定領域研究
小脳プルキンエ細胞(PC)は非常に発達した樹状突起を有する大型の神経細胞である。PCの樹状突起は、隣接するバーグマングリア細胞(BG)から伸長する多数の薄片状突起と密接に相互作用しながら発達する。我々はこれまで、両者の細胞間相互作用にコンドロイチン硫酸(CS)プロテオグリカンとして生合成される受容体型チロシンホスファターゼPTPζ、および、そのリガンドであるプレイオトロフィン(PTN)が寄与することを明らかにしてきた。PTPζとPTNとの結合にはCSの寄与が必須であり、CSを分解除去すると、両者の親和性は著しく減少する。また両者の結合は、GlcA(2S)1-3GalNAc(6S)(D単位)やGlcA1-3GalNAc(4,6 diS)(E単位)に富んだCS標品により強く阻害されることから、CS鎖内の高硫酸化された領域が結合に寄与していると考えられる。そこで発達期小脳より、PTPζの細胞外領域に相当するホスファカンを精製し、そのCSの構造解析を行ったところ、D単位が4%と高い含量を示した。また、D単位を認識するモノクローナル抗体(MO-225)を用いた免疫組織化学的解析により、PCとBGの接触面にD単位に富んだCSが豊富に存在することを見い出した。また、RT-PCRによりD単位の生成に寄与するCS 2-sulfotransferase遺伝子の発現が小脳の発達に伴って著しく増大すること、および、in situ hybridizationの結果、本遺伝子がPCに選択的に発現することが明らかになった。一方、CSの骨格構造の生成に寄与するCS synthase 1遺伝子の発現レベルは、小脳の発達過程でほぼ一定であり、その発現もPC、BGの両者に観察された。PTPζは、PCとBGの両者に発現することから、CS構造の差異が、細胞種特異的な情報伝達強度の調節に寄与している可能性が考えられる。現在、鮫CS-Dを用いてPTN結合領域の同定を試みており、18糖以上の糖鎖長が結合に必要であることを見い出している。
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