研究分担者 |
中園 聡 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (90243865)
大西 智和 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (70244217)
松本 直子 岡山大学, 大学院・社会文化科学研究科, 准教授 (30314660)
三辻 利一 大阪大谷大学, 文学部, 非常勤講師 (40031546)
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配分額 *注記 |
96,850千円 (直接経費: 74,500千円、間接経費: 22,350千円)
2007年度: 9,620千円 (直接経費: 7,400千円、間接経費: 2,220千円)
2006年度: 10,270千円 (直接経費: 7,900千円、間接経費: 2,370千円)
2005年度: 12,350千円 (直接経費: 9,500千円、間接経費: 2,850千円)
2004年度: 50,700千円 (直接経費: 39,000千円、間接経費: 11,700千円)
2003年度: 13,910千円 (直接経費: 10,700千円、間接経費: 3,210千円)
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研究概要 |
蛍光X線分析による胎土分析では,対象を弥生土器を中心とする軟質系土器にも拡張した。その結果,軟質系土器に対する分析法を確立することができ,遠隔地交渉を考察するための多くのデータを得た。実証レベルでの大きな進展として,土器の移動について形態的類似性のみに頼った解釈の不正確さを,胎土分析から指摘し,考古科学的分析を総合した検討の必要性を内外に明示することになった。 弥生時代において,北部九州と沖縄諸島との間での遠隔地交渉の重要な鍵を握る2つの重要遺跡(五島列島の宇久松原遺跡と薩摩半島西部の高橋遺跡)の発掘調査を実施し,両遺跡で墓地を確認した。両遺跡は遠隔地交渉の仲介者としての役割を果たした地域であることを高度に実証できた。 我々は「遠隔地交渉」を少なくとも5万年前以来の人類普遍の現象とみなし,遠隔地交渉を,(1)通常は食物以外の,(2)物質文化に象徴的意味が付与され,(3)生命維持戦略としてのヒトの生物的基盤に基づき,(4)交渉の範囲が「日常的接触範囲」を超えるものとして包括的に定義した。さらに,遠隔地交渉のパターン分けを行い,その意味を考察した。そして,故郷表示型→(ディアスポラ型)→異界交渉型→国家的外交型の4類型への分類に成功した。なお、それらは進化論的に順次出現したとみなすことができる。 これらの説明については,ヒトの認知的基盤の進化と性格を十分考慮にいれることで説得力を持たせることができた。遠隔地からの物資や情報に高価値を見出す傾向は,後期ホモ・サピエンスに特有の認知傾向であると考えられ,遠隔地交渉は,優れて現代人的行為と位置づけた。そして,社会の複雑化につれ,遠隔地交渉の新しいパターンが加わっていくと考えるに至ったのである。 遠隔地交渉に視点をすえることによって,従来の発展段階論的な「時代区分」とは異なる基準による歴史叙述が可能になることを,より明確に示すことができた。
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