研究課題
基盤研究(A)
我々は、Si基板表面の第1層が酸化した極薄Si酸化膜を形成し、その表面にSiやGeを真空蒸着すると、超微細で超高密度のSiやGeの単結晶ナノドットが成長することを見出した。本研究においては、このナノドット成長技術を基礎にして、Si、Geのナノドット超格子を作成する技術、直接遷移型の半導体である鉄シリサイドのナノドット超格子を作成する技術、及びナノドット超格子の光・電子物性を評価する技術の開発を行った。1.ナノドット超格子の形成・Geナノドット超格子の形成:極薄Si酸化膜を形成したSi(001)表面にGeナノドットを作製し、さらにSi薄膜に埋め込むプロセスを繰り返すことにより、Geナノドット超格子を色々な条件で作製した。この作製過程で、Geナノドット間に残っている極薄Si酸化膜がSi薄膜の成長を阻害し、非発光準位が多数形成されるため、発光強度が低下することが、分かった。この問題を解決するため、Geを高温で少量蒸着し、残っている極薄Si酸化膜を分解する方法を開発した。このようにして作製した試料から、光通信で使用される波長領域(〜1.5μm)においてピークを持つフォトルミネッセンス(PL)を観測した。さらに、この試料をアニールすることにより、強い発光の観測に成功した。また、本試料に電極を形成して電流を流すことにより、PLと同様な波長分布を持つ強度の大きいエレクトロルミネッセンス(EL)の観測にも成功した。・鉄シリサイドナノドット超格子の形成:極薄Si酸化膜上に、FeとSiを化学量論に従う比率(Fe : Si=1:2)で同時蒸着することにより、β-FeSi_2ナノドットを作製できた。さらに、このナノドットをSi薄膜中に埋め込むことにより、本ナノドット超格子の作製に成功した。このような試料のPL測定を行い、0.8eV付近にピークを持つスペクトルを得たが、欠陥からの発光の可能性もあり、今後の検討が必要である。2.ナノドット超格子の光・電子物性評価技術・走査トンネル分光法を用いて、Geナノドット中のキャリアーの量子閉じ込め効果や、クーロンプロッケード現象を室温で観測することに成功した。・走査トンネル顕微鏡(STM)を用いたカソードルミネッセンス法(STM-CL)や、エレクトロルミネッセンス法(STM-EL)の開発を行った。STM-ELに関してはシステムを完成し、STM-CLに関しては目標性能を持つことを確認した。
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