研究課題
基盤研究(A)
平成16年度までの研究で高容量リチウムイオン二次電池用Ni_<38>-Sn_<62>合金負極について電極のNi_3Sn_4相とLiの固相内反応が優れた可逆性を示し、現行の負極材料よりも高いエネルギー密度につながっていることを明らかにした。本年度は、本電極の長期充放電サイクル特性の評価戛およびそれに伴う電極物性の変化に焦点をあてた。検討の結果、電析Sn_<62>Ni_<38>合金薄膜は500mAh/gの高容量を保持しつつ150以上のサイクルを達成する良好な負極特性を示すことを明らかとした。長期充放電による電極の結晶構造の変化については、Liと合金薄膜との反応が繰り返されるに伴い、その結晶の周期性が乱れていくことが示唆された。特に、充放電を重ねることにより、未反応の低結晶性LiSn合金相が放電後に確認されるようになることを明らかとした。表面形態変化の観察からは、昨年度までの研究成果で示された初期の多孔質状態が50サイクル以上充放電を重ねることによりふさがる様子が確認された。上記のような構造・形状の変化にも関わらず良好な長期充放電特性が保たれた要因の一つとして、電極内のLi拡散係数に注目した。初期3サイクル目までは大きな拡散係数の変化はなく、約6.43x10-^<10>cm^2s^<-1>であることが示唆された。10サイクルを経た後もその値の増加は8.04x10^<-10>cm^2S^<-1>にとどまり、固体内のLiの良好な拡散性が保持されることを明らかとした。また、電極の焼成効果の検討より、Liの拡散経路としてその粒界が関与している可能性も明らかとした。Sn系の合金負極材料の長期使用を視野に入れて行った上記研究は体積変化を伴うSn系負極材料の設計指針を示唆するものとして非常に有用であると考えられる。
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