配分額 *注記 |
13,100千円 (直接経費: 13,100千円)
2006年度: 2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2005年度: 3,200千円 (直接経費: 3,200千円)
2004年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
2003年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
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研究概要 |
古典的人工知能の限界を打破して人間のような柔軟な知能を実現する鍵は,情報を記号ではなくパターンとして分散的に表現し,それをパターンのまま操作して推論などの処理を行うこと,および特定の文脈で学習した知識をそれ以外の文脈でも利用することだと考えられる.そこで,分散表現のみを用いたパターンベースの推論システムを開発し,限られた学習データを基に様々な文脈において適切に類推する機能を実現することを目的として,本研究を実施した.その際,従来手法の問題点の克服に必要な原理の開発と,脳との原理的共通性の検証も重視し,以下の成果を得た. 1.パターンベースの情報処理原理の開発:多層パーセプトロンには「1対多対応による荷重の平均化」という深刻な問題があることを指摘すると共に,この問題が「選択的不感化」という手法により解決されることを示した.また,この手法を軌道アトラクタモデルに適用することにより,任意の有限オートマトンを模擬できることなどを明らかにした. 2.推論システムの構築と改良:上記の原理に基づき,非単調神経回路網が構成する大自由度力学系のダイナミクスを利用した,完全なパターンベースの推論システムを構築した.様々な実験を行った結果,このシステムは(1)全く未知の問い対して適切に答えるといった高い類推能力をもつ,(2)学習した知識を異なる文脈でも利用することができる,(3)例外をうまく扱うことができるため,非単調推論が無理なく実現できる,(4)従来のニューラルネットに知識の追加が容易である,などこれまでにない優れた性質を持つことがわかった. 3.原理の生物学的妥当性の検証:下側頭集および海馬のニューロン活動のモデル化や心理物理実験を行い,上記の推論システムの原理,特に選択的不感化が脳において用いられていることを強く示唆する結果を得た.
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