研究分担者 |
八田 秀雄 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60208535)
新井 秀明 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60313160)
長尾 恭光 (長尾 泰光) 京都大学, 大学院・農学研究科, 助手 (80303874)
柳原 大 豊橋技術科学大学, 体育保健センター, 助教授 (90252725)
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研究概要 |
本研究において,はじめに運動という環境因子の効果を明らかにするために,遺伝的側面を考慮して,遺伝子プールの均一なインブレッドマウス及び遺伝子プールの増大のために野生マウスを利用して,マウスを対象とした運動実験モデルの考案を行った.LT(Lactate Threshold乳酸性閾値)強度から全身の代謝を制御するストレスホルモンであるグルココルチコイド及びカテコールアミンのアドレナリンやノルアドレナリンも急上昇しはじめるので,LTは全身性のストレス応答が促進する閾値であるともいえる.脳内においても,LT強度上下の運動では,脳の活動レベルが質的量的に異なる可能性が考えられるため,マウスのLTを測定できるシステムを構築した.トレッドミル走によりLT前後での脳内アミンの部位による変化を調査した結果,LTより下の強度では海馬のセロトニン代謝回転の亢進が観察された.また,自発的な運動習慣(回転ケージ運動,LT以下の強度)による血中グルココルチコイド値の変化,及び副腎のグルココルチコイド産生調節系について検討を加えたところ,両者の因果関係を示唆することができた.またこの運動習慣は,脳以外にある時計遺伝子の制御にも関わっていることを予備的であるが明らかにした.さらに,教育現場へ応用するために,フィールドにおけるヒトのLTの簡便な評価方法についての検討を行うとともに,LT強度の運動による脳やこころへの影響についての検討を行った.本研究の結果から,LT強度の運動は,呼吸循環機能だけではなく脳をも活性化させうる可能性が示唆され,「立位で走る」というヒトを人間にした人類学的な背景にも新たな知見を与えることになったと考えられる
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