研究概要 |
本研究の目的は,我が国の思春期の子どもたちの喫煙,飲酒,薬物乱用行動と密接な関わりがあると考えられる個人及び社会的スキル(ライフスキル)に焦点を当てた包括的な予防プログラムを開発し,その有効性を3年間にわたる縦断研究によって評価することにある。 調査対象は,新潟県の2校の中学校1年生230人であった。2004年3月(小学校6年時)に,全生徒を対象とした質問紙法による事前調査を実施し,1)セルフエスティーム,2)社会的スキル,3)ストレス対処スキル,4)喫煙,飲酒,薬物乱用に関する態度と行動を測定した。事前調査後,介入校の生徒はライフスキル形成を基礎とする喫煙,飲酒,薬物乱用防止プログラム(中学校1年で17時間,中学校2年で10時間)を受けた。事後調査は,各学年の終わりに,両校の全生徒を対象として実施した。 第1回目の事後調査の結果によれば,ライフスキル形成に焦点を当てた包括的な喫煙,飲酒,薬物乱用防止プログラムは,セルフエスティーム,社会的スキル,ストレス対処スキルを高め,喫煙,飲酒,薬物乱用に対する否定的態度を強化するのに有効であり,とりわけ女子において顕著な効果が認められた。 また第2回目の事後調査の結果によれば,とりわけ女子において効果が認められ,プログラムはセルフエスティームと社会的スキルを向上させ,メディアや仲間の圧力などの社会的影響に対処する自己効力感を向上させることが明らかになった。 本研究の結果は,ライフスキル形成を基礎とする包括的なプログラムが,我が国青少年の喫煙,飲酒,薬物乱用を防止するのに有効であることを示唆するものである。
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