研究概要 |
閉塞型の靴の蒸れは、足蒸れを生じ、快適性を阻害する.そこで,本研究では蒸れて不快になりやすい革靴の熱・水分移動性に革靴の材料特性(天然皮革か、人工皮革か)や形態特性(足囲寸法が1E,2E,3E)が及ぼす影響について検討し、不快になりやすい靴内環境を改善するための解決策を提起することを目的に,研究を遂行した. 被験者実験により革靴内で土踏まず部は足裏からの発汗で安静時でも湿度が高いが、運動中、湿度が顕著に低下したことから,靴のふいご作用による靴内空気の環境への換気効果が顕著に観察された.靴の足へのフィット性の靴内気候への効果を検討した結果,足へのフィット性が高いほど、靴着用時に開口部からの微風速が大きくなる傾向が見られた.著者の先行研究から狭い間隙ほど,環境との差圧が大きくなるため,ふいご作用が生じ易くなり,換気量が大きくなることが理論的に確かめられている。以上から換気を効果的に行うためには靴と足とのフィット性は高い方がよいといえる. 歩行中のふいご作用を増幅させるために換気中敷きを試作した.本研究で開発した換気中敷きは、小型の逆流防止弁を設けたことにより、空気の逆流が防止でき、中敷き内部の構造を適度の弾性があり、メッシュ構造で空気をため込みやすい構造、歩行による踵および指付け根部の踏み込みにより外部の空気が靴内に効果的に入り込み、換気を促進できる。また、踵部に空気流入部を設け、蒸れが最も大きい爪先部に排出口を設けたため、蒸れ防止に効果的である.換気中敷の試作品を使用して被験者実験を行った結果,換気中敷の使用により水蒸気質量濃度の低下が認められた.この換気中敷きは特別なバッテリーを必要とせず,人の歩行動作そのものを利用して蒸れやすい靴内の換気を促すような仕組みを盛り込んでいるため,有用であると考えられる. 模擬足装置による革靴の靴内気候の測定で靴からの蒸発水分量、革靴に吸湿・吸水される水分量を測定した結果,人工皮革靴へ吸湿・吸水される水分量は天然皮革靴の平均で2.6倍であった。供給水分量は同一なので水分蒸発量は天然皮革の方が大きいことが分かった.酢酸カリウム法による素材としての透湿抵抗試験では1.1倍であることが確認された.人工皮革靴も性能が向上してはいるが,現状では天然皮革靴のほうが人工皮革靴より人の健康にも,快適性にも良いと思われる.
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