研究概要 |
研究目的 咀嚼運動によって感知されるテクスチャーという視点から、人間の咀嚼運動に近づけた「咀嚼ロボットによる物性評価研究」によって2次元運動機能を持つ物性測定器の開発が完成した。本研究は開発した測定器をテクスチャー測定機器としての実用化につなげることを目的とした。 研究成果 一般食品より均質で安定性のある試料を検討し、破断力や破断ひずみを任意に設定できるものとして、寒天ゲル(以下A)、カラギーナンゲル(以下K)、ゼラチンゲル(以下Z)を用いた9種類の試料を設定した。テクスチャーアナライザーを用いて、硬さを測定し、低強度(15N)のゲルとしてA2.5%濃度、K8.5%濃度、Z7.5%濃度を採用した。中程度(30N)の強度はA4.5%、K12.5%、Z11%、高強度(45N)はA6.5%、K17.5%、Z16%を採用した。試料の破断ひずみはゼラチンが最も大きく、ついでカラギーナン、寒天となり、破断力・破断ひずみがそれぞれ異なる試料を得た。2次元圧縮測定器による測定方法は、従来の1次元圧縮とは異なり、側方運動を負荷するため、プランジャーは底面1mm幅、30mm長さの刃型とした。各試料破断点に達するまでの側方運動距離を今回0,3,6,9mmに設定し、側方運動距離すなわち、すり切る距離によって破断力がどのように変化するかを検討した。圧縮速度は10・40・80mm/secと3段階に変化させ、破断力を測定した。 その結果、側方距離の増加により、破断力は3種類のゲル化剤でともに低下した。側方距離における破断力の変化は、ひずみの最も大きいゼラチンで顕著で、次いでカラギーナン,寒天の順であった。また、圧縮速度の増加における変化では、寒天は速度が増すほど硬さの程度に関わらずわずかながら破断力が増加し、カラギーナンは速度の増加に伴い破断力の低下がみられ、ゼラチンは速度が増すほど著しく破断力が増加した。最も変化が大きかったのは、ひずみの大きいゼラチンであった。これより、物性の破断に要する力は圧縮速度やすり切り方法等によって変化することが示された。義歯装着での咀嚼の大きな特徴は、側方運動量の低下にある。そのような場合、ひずみの大きな食品で噛みきりにくさが生じやすく、口腔内での咀嚼運動の変化によってテクスチャー認知が変化することが示唆された。本機器を用いることで義歯装着に伴うテクスチャー認知の変化を、客観的に評価することが期待でき、今後は日常食品を使用しての研究展開をしていく。
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