研究概要 |
1.安定同位体比からの考察 土器付着炭化物の炭素・窒素分析を行ったところ,多くのδ^<13>C値は-26%。前後に集中しでいて,典型的な陸上生物を起源とすることが示された。-25%。よりも大きなδ^<13>C値を示す一部の試料には,起源物質として海洋生物が混在している可能性がある。このような試料については,「海洋リザーバー効果」の影響を考慮すべきであろう。また,δ^<13>C値が-10%に達するようなものは海洋生物の混在では説明できず,C_4植物の混在が考えられる。なお陸上のC_4植物であれば海洋リザーバー効果の影響は受けず,年代は一般的なC_3植物と同じ値を示すはずである。 2.AMS-^<14>C法からの考察 土器付着炭化物の炭素14年代の多くは,土器型式から予想される年代,もしくは共伴する炭化材などの陸上生物起源の年代とほぼ整合的である。一方北海道対雁2遺跡出土の土器付着炭化物をはじめ,北海道,北東北で出土する土器に付着する炭化物の中には,δ^<13>C値が-24%前後,C/N比が高いという特徴とともに,予想される年代よりも古い炭素14年代を示すものが見られる。当初これを海洋生物の脂質に由来するものと考えたが,その後燃料材として泥炭が用いられていた可能性を考察した。
|