研究課題
基盤研究(B)
低分子量G蛋白質H-Rasは細胞内情報伝達のON、OFFを調節する分子スイッチとして働く重要な情報伝達分子である。Rasは細胞外刺激を契機に、結合しているGDPをGTPに交換されて活性化型となり、標的タンパク質との結合能を獲得して下流に情報を伝達すると言われている。Ras情報伝達機構の解明には生理的条件下でのRasと標的タンパク質との相互作用反応の詳細な解析が必須であるが、その相互作用は非常に弱く不安定なためにin vitroで反応の詳細を明らかにすることは難しい。我々は、生細胞観察へ1分子可視化技術を導入し、細胞内で分子間相互作用の反応速度論解析を可能にした。本研究では、細胞内でRasの標的タンパク質の一つであるRaf1の挙動を1分子可視化解析することにより、Ras、Raf1相互作用の反応ダイナミクスとキネティクスを研究し以下の結果を得た。1)活性化型Ras(RasGTP)とRaf1の相互作用は逐次反応で、Raf1は相互作用反応中に中間状態を経由して解離する。2)中間状態の形成には、Raf1内の2つのRas結合領域(RBDとCRD)が必要である。3)RasとRaf1の結合状態がRas/RBDからRas/RBDCRDへと遷移する反応は中間状態の形成のための律速過程ではなく、Ras/Raf1相互作用初期過程でRasGDPとRasGTPを見分けるために使われている。4)Ras/Raf1中間状態の形成にはS/T-キナーゼの結合やリン酸化反応が関与している。5)Ras活性化から10分以上を経過した細胞では、活性化型RasとRaf1の相互作用部位は細胞膜の一部に局在し、特に局在の著しい部位から細胞の変形が起こる。個々のRaf1分子は恒常的に細胞質と細胞膜を循環しており、膜局在は動的平衡状態として維持されている。
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