研究概要 |
同一地域に存在する多種多様な空間データを扱う際,変数間の関係に対する多変量解析手法の適用が良く行われる.しかしこの方法では,分析自体に空間の概念が取り込まれないため,分析上様々な問題点が生ずる.例えば回帰分析では,空間的に隣接した他地域の変数を説明変数として取り込むことがしばしば行われるが,この場合,誤差項の空間相関の扱いが極めて複雑になる.また,地区単位ごとの空間集計を行うと,分析結果が集計単位の定義に依存する,いわゆるMAUP(Modifiable Areal Unit Problem)を避けることができなくなる. この問題の解決には,変量間関係の分析に空間概念を明示的に取り込む,即ち,空間的視点に立った多変量解析手法を適用する必要がある.同一地域に存在する各種の空間データをそれぞれ場所の関数(変量)と見なすと,変量間関係の空間分析には,空間的多変量を統合的に解析するための空間多変量解析理論が必要であるといえる.そこで本研究では,新たな空間多変量解析手法の開発とその適用を行っている.特にここでは,1)手法自体への空間概念の取り込み,2)探索的空間分析での利用可能性,3)広い適用範囲の確保,の3点に留意している.1)は,前述した問題点の解決に直接答えたものであり,本研究で最も重視される点である.2)は,近年のデータ大量化の潮流を鑑みたものであり,今後大きな需要の予想される探索的空間分析への適用を実現する.3)については,本研究では多変量という概念の中に,時系列データや空間的誤差なども含めて考える.空間に分布する時系列データも空間的関数の集合であり,空間オブジェクトのデータ誤差も各地点で定義される空間的関数であると見なせば,本研究で開発する手法を時空間データ解析や空間誤差解析へも拡張する可能性を確保することができる.
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