研究課題
基盤研究(B)
神経細胞は、1本の軸索と複数の樹状突起を有し神経極性を形成する。本研究は、プロテオミクスを用いて神経細胞の極性や軸索形成に関わる分子群を網羅的に同定し機能解析を行うことにより、神経極性形成・維持の分子ネットワークを明らかとすることを目的としている。高感度2次元電気泳動を用いたこれまでの研究で、我々は200個の神経軸索に濃縮するタンパク質と277個の神経極性とともに発現が上昇するタンパク質を検出している。本研究で我々は92個の神経軸索に濃縮するタンパク質と94個の神経極性とともに発現が上昇するタンパク質を同定した。これらのうち、2つの新規タンパク質Shootin1とSingarに関して、重点的な機能解析を行った。Shootin1に関しては、RNAiによる発現抑制により、神経細胞の極性形成の遅延が引き起こされることを見出した。以上の結果からShootin1が神経極性形成の初期の段階において重要な役割を果たす可能性が示唆された。また、EGFP融合タンパク質を作成してShootin1の挙動をリアルタイムで観察したところ、Shootin1が神経軸索の先端部の成長円錐でダイナミックに移動することがわかった。また、Singarは極性形成に伴って発現量が上昇するが軸索にも樹状突起にも局在した。SingarをRNAiで発現抑制すると過剰な軸索が形成された。さらにこの分子はShootin1の過剰発現による過剰軸索の形成を抑制した。従ってSingarが正常な極性形成過程において過剰な軸索の形成を抑制する可能性が示唆された。さらに、Singarの発現抑制により軸索形成作用が認められたことから、Singarの発現を調節することにより神経軸索再生医療に利用できる可能性が示唆された。本研究で、神経極性形成に重要な役割を果たすと考えられるShootin1とSingarという新しいタンパク質を発見することができたのは、予想以上の成果と考えている。今後は再生医療への応用も含めて更なる解析を進めたい。
すべて 2006 2005 2004 2003 その他
すべて 雑誌論文 (16件) 図書 (3件) 産業財産権 (6件) 文献書誌 (7件)
Genes Cells 11
ページ: 531-540
120000961744
IDENSHIIGAKU MOOK, Frontiers in disease proteomics (Medical-do)
ページ: 76-81
Curr. Proteomics 1
ページ: 35-39
J. Mass Spectrometry 39
ページ: 202-207
J.Mass Spectrometry 39
Curr.Proteomics 1
J.Neurochem. 86
ページ: 1042-1050
J. Electrophresis 47
ページ: 27-31
BIOforum Europe Edition Francaise 1
ページ: 28-29
生体の科学 54
ページ: 90-96
J.Electrophresis 47
50000863729
SEITAI NO KAGAKU 54(2)
BIOforun Europe Edition Francaise 1
Moving synapse and neuronal network (Shiosaka, S. (ed)) (Kinpou-do)
ページ: 103-110