研究課題
基盤研究(B)
戦後日本とアジア諸国との外交関係樹立にあたっては、敗戦後の日本人引揚に伴い発生した現地所在の元日本人所有私有財産について、その清算代金支払い要求が国内に定住を始めた引揚者から提出され、外交交渉にも反映されていた。その引揚者の要求は、保守政治家・元官僚有力者の支援を受けて進められ、在外私有財産を日本政府もしくは相手国政府が補償せよとするものであった。引揚者にとって「外地」で失った土地家屋は、自らと父祖の移住と開拓を象徴した。その補償問題は戦後日本社会における植民、外地への移住と帰還の社会的記憶と意味を左右し、引揚者の「政治的性格」を決する問題であった。つまり植民地支配の性格を社会的に決する問題であったといえる。運動過程でも、一方で、引揚者が帝国主義の「走狗」と呼ばれることに耐えられないという反発があり、他方で、賠償責任を引揚者にのみ負わせ戦争被害のみを訴えるばかりの日本社会全体への違和感、そしてアジア諸国への反省が存在した。日本政府は、講和準備段階では、在外私有財産を賠償総額全体を左右する重要テーマとみなし、国際法上の公式領土所在のそれを、満洲事変以後の非合法領土・占領地所在のそれと区別して交渉せんとした。また、講和以後は、国内の引揚者からの在外私有財産補償責任を回避するべく、日韓交渉に代表される「経済協力」方式による国交正常化を行った。それこそ、正式な賠償や補償という言葉を用いることができなかった国内的要因であり、現代の一連の歴史認識問題の起源である。今後は、韓国外交部資料等を用い、冷戦や経済開発・地域形成等の多面的な要因を視野に入れ、日韓に絞ったより包括的な研究を進める予定である。浅野豊美監修・解説『故郷へ』(現代史料出版、2005年)は、朝日新聞夕刊〔2005年8月13日全国版〕でも紹介され韓国でも関心を呼んだ結果、韓国語にも翻訳され韓国中央日報に紹介された。
すべて 2008 2005 2004 その他
すべて 雑誌論文 (8件) 図書 (6件) 文献書誌 (1件)
Nagoya : Nagoya University Press
Seoul : Sol publishing company
Akihiko Tanaka, Masayuki Yamauchi, Taizo Yakushiji, Keiichi Tsunekawa, Kokusai Seiji Jiten, Koubundo
Tokyo : Gendai shiryou publishing company
社会科学研究(中京大学社会科学研究所) 第26巻 第1号(発表予定)
40007223200
Chihiro Hosoya, Akira Iriye, Ryo Oshiba, Kioku toshite no Pearl Harbor, Minerva Publishing Company
ページ: 273-315
Toyomi Asano, Toshihiko Matsuda, Shokuminchi Teikoku Nihon no hoteki tenkai, Shinzansha
ページ: 327-381
国際問題研究所紀要(愛知大学国際問題研究所) 123号
ページ: 311-349
40006447401