配分額 *注記 |
9,300千円 (直接経費: 9,300千円)
2005年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2004年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2003年度: 3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
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研究概要 |
本研究は,近年の日本において高まる将来不安や不確実性がもたらすマクロ経済的帰結について定量的に分析した.教育,設備投資,家計消費,金融政策,および金利水準のいずれの側面においても,不安や不確実性が日本のマクロ経済に対して無視し得ない影響をもたらしてきた. 1.第一章「教育における流動性制約」:(財)家計経済研究所「消費生活に関するパネル調査」を利用して,教育費支出関数を推定した.実証結果は,流動性制約のない単純な人的投資モデルでなく,流動性制約のある人的投資モデルあるいは消費としての教育需要モデルと整合的であった. 2.第二章「設備投資と不確実性」:日本政策投資銀行「企業財務データバンク」を用いて,設備投資関数を推定した.その結果,株価収益率および実質売上高の変動が,有意に設備投資を減退させていることがわかった.このことは,売上や株価を決定する要因のうち,企業の需要ではなく供給に関する不確実性が,設備投資行動にとって重要であることを意味する. 3.第三章「雇用不安と家計消費」:雇用不安に基づく予備的貯蓄動機に関する動学的一般均衡モデルにおいて,消費の平準化を基準とする社会厚生がインフレによってどれだけ変化するかについて分析した.その結果,1990年代の金融政策の下では,GDPの0.334%がインフレのコストとして計測された.また,インフレのコストは,雇用不安の悪化によって大幅に高まる. 4.第四章「金融政策ルールの不確実性」:貨幣集計量を操作する金融政策の下では,貨幣需要が不安定化するという「グッドハートの法則」に焦点を当て,動学的一般均衡モデルの中で,中央銀行の裁量によって貨幣集計量がランダムに考慮される金融政策ルールの不確実性を明示的に扱った.モデルは,日本における貨幣の流通速度の変動を再現することに成功した. 5.第五章「景気変動と金利水準」:「ルーカスの木」モデルに依拠して,日本の長期金利水準の特徴について,G7諸国と比較しながら分析した.その結果,低い期待インフレ率のみならず,消費の成長率とインフレ率の間の共分散が大きいことによる負のインフレ・プレミアムが,日本の名目金利を低める要因となっていることがわかった.
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