配分額 *注記 |
15,300千円 (直接経費: 15,300千円)
2005年度: 3,800千円 (直接経費: 3,800千円)
2004年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
2003年度: 7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
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研究概要 |
平成15-16年は,フラットシンギング(旋律の音程を下がり気味に歌う)現象の解明のために,音楽専攻/非専攻大学生を対象としたさまざまな実験(予備・追実験を含む)をおこない,複合条件下で派生するフラットシンギングの詳細な実態把握をおこなった。その結果,以下の点が明らかとなった。すなわち(1)純音及びピアノ音が提示された場合に15セント-20セント程度(1/4半音)低く歌われること(2)逆に,ボーカル音に対してはやや高めに歌われること(3)非音楽専攻学生にフラット傾向が強く認められること(4)性差はあまりみられないが,裏声を使用した際に女声のフラット傾向が強くなること(5)音楽文脈のない条件下で,より強く認められること(6)音程による違いがあり,上行4度と下行5度により強く認められること等である。被験者に対するインタビューや内観からは,「純音で提示されるとわかりづらい」「自分でどのようにコントロールしたら良いのか分からない」といった興味深い発言が得られた。 17年度の研究は,1)熟達歌手におけるフラット・シャープシンギングの事例と,2)学習者のフラット化の治療の2点中心に研究と実践をおこなった。具体的にはハンス・ホッターのフラット,フィッシャー・ディスカウのシャープシンギングの歌唱を分析した。この分析では,CSL4400を用いて研究者による測定と新しく購入したMelodyne2.6による自動測定の結果を比較した。一方,治療法の研究では,Protoolsにautotuneをアドインしたシステムを用いて,被験者のフラット化した部分を矯正し,この矯正した歌唱をターゲットモデルとする,というアクションリサーチをおこなった。これは非常に効果的な方法であり,国内,国外での学会発表,講演では非常に注目され,大きな反響をおこした。また,フラットシンギングの著しい声楽専攻の大学院生にはMelodyneによる視聴覚フィードバックをおこなった。演奏曲目すべてをMelodyneでピッチ分析し,どういう条件のもとでフラット化が生じるか,その原因について視覚的分析をもとに追跡しながら,矯正モデルをつくっていったのである。この研究を通じて視覚フィードバックによる歌唱教育が調子外れのレベルから専門教育においても有効であることが明らかになった。
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