研究概要 |
理論的立場から,原子核の熱力学的性質及びそれに関連したテーマについて研究を行い,次のような成果を得た。 1,殻模型モンテカルロ法において角運動量射影を行う,比較的簡便な方法を開発し,それを応用して核準位密度のスピン依存性を調べた。Fe-Ni領域核に対する数値計算により,偶々核では低エネルギーで対相関の影響が見られること,それがエネルギーの増加と共に見えなくなること,奇核においてはこのような効果は見られないことを見出した。 2,殻模型モンテカルロ法を用いた微視的立場から^<162>Dyのような希土類領域の変形核について準位密度の計算を実行し,広いエネルギー領域にわたって実験データを再現することに成功した。 3.有限温度平均場理論における量子数射影法を再定式化し,さらにカノニカル集団におけるBCS型理論を初めて定式化した。これらを用いて有限系での温度変化に伴う相転移,特に超流動・常流動相転移における保存則の役割を調べ,最近の実験により超流動・常流動相転移の痕跡であると示唆されていた原子核のS字型熱容量が粒子数保存の影響により現れること等を指摘した。 4.不安定核領域の殻構造,特に対相関の効果を詳しく調べるため,ガウス関数展開法を応用したHartree-Fock-Bogolyubov (HFB)計算の新しいアルゴリズムを開発した。新magic numberとして注目されているN=16及びN=32領域で有効相互作用により殻構造に違いが見られるが,HFB計算を実行するとshell gapとpairing gapがほぼcompensateすることが分かった。
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