研究概要 |
日本においては,爆破地震動研究グループによって,日本全国で地殻や最上部マントルの構造を調べるために構造探査が行われてきた。本研究では,これらの波形記録を集めてデータベースを作成した。これらの測線のうち,測線長が130kmをこえる5つの測線について詳細に調べた.多くの測線において顕著なモホ面からの反射波(PmP波)とそのコーダ波が検出された.次に,その検出されたPmPコーダ波の特性について調べた.これまでの研究からPmPコーダ波の原因として考えられている、3つのモデル:1)モホ面に顕著な凹凸があるモデル、2)モホ面下の最上部マントルが層状構造をしているモデル、3)モホ面下の最上部マントルに散乱体が存在するモデル、について検討をおこない,その生成原因を調べた.その結果,1)のモホ面に顕著な凹凸があるモデルや2)のモホ面下の最上部マントルが層状構造をしているモデルでは,観測事実を説明できないことがわかった。そのため,日本の最上部マントルには散乱体が存在している可能性が示唆された.散乱体の分布を定量的に評価するため,散乱係数の推定を行った。その結果,上部地殻で0.01km^<-1>,下部地殻で0.02km^<-1>,最上部マントルで0.025km^<-1>,の値が求められた。このことは,最上部マントルには,反射的構造をしていると考えられている下部地殻より散乱体が多く存在することを示すことになる。 本研究から,日本の最上部マントルは,大陸地域で見られるような「透明な最上部マントル」のモデルでは説明できないこととなり,島弧の最上部マントルは不均質な構造をしており,均質で「透明な」大陸の最上部マントルと大きく異なることがわかった.また,その成因としてマントルウェッジで形成されたマグマが上昇し,モホ面下で結晶分離作用をおこし,その結果最上部マントルに散乱体が形成された可能性を示した。
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