研究課題
基盤研究(B)
月は表側が広く海で覆われているのに対し、裏側は高地が占め、著しい2面性を示している。この2面性は熱史と深く関係しており、表面だけでなく内部においてどのような違いがあるのか測地学的手法でメスを入れる。またこのために4-wayドプラー観測法と相対VLBI観測法の2つの新しい観測法を考案・採用し、必要な装置およびデータ処理・解析ソフトウエアを開発するが本研究課題である。3年にわたる研究で以下の成果を得た。(1)高高度の中継衛星を利用して低高度衛星が,月の裏側を航行中にドプラー観測を行う新しい手法(4-Wayドプラー観測法)を確立した。この研究の中で、衛星搭載の送信アンテナの位相特性が衛星の自転によってドプラー測定に測定精度2mmを超える影響を及ぼすことを見出し、米国電子情報通信学会誌に発表した。(2)2つの月周回衛星を交互に切り替えまたは同時に観測して、相互の距離差を月付近において20cmの誤差で決定する新しい手法を確立した。この関連研究で2つの博士論文が提出された。(3)上記(1)、(2)で得られるデータから初めて月の裏側の重力場を高精度で求めるデータ処理・解析ソフトウエアを開発した。(4)上記成果を2008年打ち上げ予定のわが国の月探査機SELENEで実現するための準備を整えた。(5)SELENEで得られるデータを解析し、目標とする表側と裏側の重力異常の分布と大きさの違いから月の2分性および熱史を解明する準備を整えた。また、月の内部構造を知るための将来期待される新しい搭載機器、得られる科学的成果の検討を行った。
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