研究概要 |
本研究は、マントル内部での親鉄・親銅元素の分布と挙動の総合的解明を目指した。そのために、(1)白金族元素の定量法の開発、(2)白金族元素以外の親鉄・親銅・親石元素の新しい分析法の開発、(3)Re-Os法を用いるための、高感度・高精度かつ簡便な質量分析法の開発の3点を主におこなった。まず、正確さが高い分析から研究をスタートさせるという原点に戻り、試料分解法から検討した。最終的には、約300℃で試料分解が可能な安価な密閉分解容器をあらたに設計・試作した。これのデザインを煮詰め、特許申請を行った。これは、完成すれば、世界中で使われるようになると確信する、画期的なものとなるはずである。この特許申請は公開後、2006年3月現在意見書と補正書を提出しており、特許化は近いと考えている。さらに、四重極型ICP-MSを用いた新しい、Bi、Tl、Inと、Li, Be, Rb, Sr, Y, Cs, Ba, La, Ce, Pr, Nd, Eu, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb, Lu, Pb, Th、Uの分析法を開発した。この方法では、Smスパイクを加えて岩石試料を分解しさえすれば、後の希釈を定量的に行なわずに分析できる、ID-IS(同位体希釈-内標準法)を開発し、適用した。試料溶液を0.1ml以下で分析が可能なPseudo-FI法(擬似フローインジェクション法)も開発した。さらに、高分解能型ICP-MS(HR-ICP-MS)を用いて、同一の試料溶液からNa, Mg, Al, P, Ca, V, Mn,Fe, Co, K, Sc, Ni, Cu, ZnやGaが分析できる方法も確立した(revise版をGeostandards and Geoanalytical Research誌に投稿中)。また、HFS元素分析法にも改良を加え、ID法、ID-IS法と四重極型ICP-MS、およびHR-ICP-MSを組み合わせた、B, Ti, Zr, Nb, Mo, Sn, Sb, Hf, Taの分析法も開発した(投稿中)。従来のOs同位体比測定法はN-TIMSで行なわれているが、これと同程度のパフォーマンス(分析精度1%以下、Os必要量1pg以下)を持つ、マルチイオンカウンティング法を用いたMC-ICP-MS分析法を開発した。この方法はOs同位体比測定にN-TIMSが必要なくなるという、画期的なものである(Analytical Chemistry誌、印刷中)。 分析法の開発に予想以上に手間取り、実際のかんらん岩試料の分析の測定はこれからであるが、分析法がほぼ完成したので応用研究を遂行することは容易である。
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