研究概要 |
パルストレイン及び最適化波形整形による反応制御の可能性を見定めるために,40Kまで冷却したペリレン結晶の励起状態の制御を行った。その結果,励起効率を2倍近くまで増加させるパルス波形があることを見出した。また。ペリレン結晶の2種類ある励起状態(E-状態,Y-状態)のうち,最適化により波形を選ぶことでY-状態を選択的に励起できることを実証した。以上の結果から,パルストレイン及び最適化波形整形により,実際に励起効率及び励起状態の占有数を制御できること確かめることができた。次に,実際の制御を行うためにはパルスエネルギーを増やす必要が生じたため,再生増幅フェムト秒レーザーシステムの出力パルスの圧縮を行った。そこで,非線形光学結晶をタンデムで使ったχ^<(2)>:χ^<(2)>カスケード過程によりコヒーレントにスペクトル幅を拡張させ,その後,波形整形システムを用いた最適化によりパルス幅の圧縮を行った。その結果,12nmであったレーザーパルスのスペクトル幅を28nmまで拡張することに成功した。 波形整形による制御の実験と平行して,制御を行う反応系の探索を目的とした表面反応ダイナミクスの観測を行った。ゼオライト表面の水酸基とそれに吸着した分子の挙動に関しては,水酸基はオレフィン分子や一酸化炭素分子が吸着することで振動励起寿命が極端に短くなること,また,イソブテンを吸着させた場合では,水酸基を振動励起することでイソブテンの構造変化が生じることを見出した。また,単結晶表面における吸着分子のダイナミクスに関しては,分子が吸着したニッケルや白金の単結晶に近赤外パルスを照射して表面温度を瞬間的に上昇させることで生じる変化を,界面和周波発生法により時間分解観測を行った,その結果,一酸化炭素分子が吸着した場合は吸着サイトを変えるサイトホッピングが生じて吸着構造が変化すること,水が氷状に吸着した場合は水の融解がバルクの熱伝導から予測される時間スケールよりも遅く進行すること,そして,ギ酸分子イオンを吸着させた場合は構造変化が生じることがわかった。
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