研究課題
基盤研究(B)
生物活性を有する天然有機化合物を効率的に合成するプロセスの開発は重要なテーマである。また、このプロセスは、地球資源・環境に負荷をかけることのないものであることが肝要である。本研究では植物が大量に生産する「糖質」に着目し、この骨格変換反応を利用することによって、タキソール、アクチノボリン、フマギロールといった、有望な抗腫瘍活性を有する天然有機化合物の効率的な全合成プロセスを開発することを目的としている。タキソールの合成研究においては、入手容易な糖質であるD-グルカールを出発原料とし、Ferrier環化反応により、キラルな多官能性シクロヘキセノンへ高効率的に変換した。これにビニル基を1,4-付加、生じたエノラートをアルデヒドでトラップする「3成分連結反応」によりC環部を構築した。これにA環部をカップリングし、ヨウ化サマリウムを利用したタキサン骨格構築を試みたところ、タキサン骨格の合成を達成することができた。現在、C-11、C-12位間への二重結合の導入、ならびに酸素官能基の導入を検討中である。アクチノボリンの合成においては、D-グルコースから誘導したシクロヘキセノンとビニル金属、ヒドロキシアルデヒドの「3成分連結反応」を鍵として、その全合成プロセスを確立することができた。また、「3成分連結反応」において、求電子剤として用いるヒドロキシアルデヒドの保護基を変更することにより、生じるアルドール成績体の立体化学が、劇的に変化するというきわめて興味深い知見を得た。フマギロール合成においてはD-グルコースを出発原料とし、Ferrier環化反応、Claisen転位反応などを活用することにより、Sorensenらの全合成中間体を効率的に合成するプロセスの開発に成功した。現在、全合成の最終段階にある。
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