配分額 *注記 |
15,100千円 (直接経費: 15,100千円)
2005年度: 3,400千円 (直接経費: 3,400千円)
2004年度: 2,900千円 (直接経費: 2,900千円)
2003年度: 8,800千円 (直接経費: 8,800千円)
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研究概要 |
本研究では,π受容性の極めて低い,「電子供与型σ配位子」であるボランルイス塩基付加物を陽イオン性金属中心に配位させることにより,新しいボラン錯体を合成した。これらの錯体においては,いずれの場合にも,配位したBH水素と中心金属との結合は中性ボラン錯体よりも琿くなっている。また同時に,ポランが陽イオン性中心への配位によって分極し,化学的に活性化されていることを示す結果を得た。 ボリルマンガン錯体およびモリブデン錯体をプロトン化することにより,対応する陽イオン性ボラン錯体 [Mn(CO)_4,(PR_3)(η^1-BH_3・PMe_3)]^+(1)および [Cp^・Mo(CO)_3(η^i-BH_3・PMe_3)]^+(2)を得た。またルテニウム錯体[CpRu(PMe_3)_2Cl]のクロロ配位子を引き抜いて生じた空の配位座にボランを配位させることにより,ルテニウムボラン錯体[CpRu(PMe_3)_2(η^1-BH_3・PMe_3)]^+(3)を合成した。 マンガン錯体1およびモリブデン錯体2は室温で分解するが,その主たる分解経路はボラン配位子の解離ではなく,ヒドリドを金属上に残したB-H結合の解裂であった。この反応は金属上でB-H結合をヘテロリティックに活性化する新しいタイプの反応である。 錯体1および2のBHヘテロリティック解裂は速やかに進行するため,その単離は困難であった。これに対して陽イオン性でありながら電子豊富な[CpRu(PMe_3)_2]^+を金属フラグメントとして用いた場合,生成する錯体3は熱的に安定となり,真空下ではBH結合解裂も観測されなかった。これは3における金属-ボランの結合は金属上の正電荷によってかなり強くなっているが,金属中心が電子豊富であるためにポランの分極が小さいためであると考えられる。しかしながらこの場合にも,水分子の存在によってBHの不均等解裂を含む反応が進行した。
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