研究概要 |
「X線ポリキャピラリーレンズ」という新規な光学素子を用いて微小部蛍光X線分析装置組み立てることができた。ポリキャピラリーX線レンズは、微細なガラス管を数10万本以上束ね、X線集光レンズとして成形したものであり、X線の取り込み角度を大きく取れるため、X線を効率良く利用でき、かつ微小領域に集光することが可能となる。まず、ポリキャピラリーX線レンズの性能を評価するために、ビームサイズを計測した。集光の焦点において約48ミクロンであったが、焦点距離に強く依存することが分かった。この装置を利用して以下の実験を行った。 (1)視野可変元素マッピング ビームサイズが焦点位置に応じて数10ミクロンから数100ミクロンに変化することを利用して、試料に応じて視野を変えながら、効率よく元素マッピングを得ることを提案し、電子部品材料に対して実証した。 (2)キノア種子の元素マッピング キノアと呼ばれる1mm程度の種子の内部の元素分布の測定を行った。蛍光X線は大気圧下で非破壊的に測定できるので、この特徴を生かして成長過程の種子、及び、芽や根の内部の元素分布(K, Cl, Fe, Cu,など)を測定した。この結果はTXRF2003国際会議でポスター発表し、ベストポスター賞を受賞した。 (3)原子間力顕微鏡との組み合わせ実験 原子間力顕微鏡のカンチレバーに非常に小さい穴を設けることにより、物理的にX線ビームサイズを絞ることを検討した。これにより、原子間力像とX線元素分布像の同時観測が可能となった。 (4)3次元X線分析顕微鏡の設計・試作 研究期間の最後、および研究終了後、引き続いて3次元X線分析顕微鏡の設計・試作を行っており、H17年8月現在、装置の試作を終えつつある。2つのポリキャピラリーX線レンズをX線入射励起側と蛍光X線の検出側に用いる共焦点型の配置を採用した。
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