配分額 *注記 |
13,500千円 (直接経費: 13,500千円)
2005年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2004年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2003年度: 10,800千円 (直接経費: 10,800千円)
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研究概要 |
固体無機化合物の表面は結合不飽和なサイトが存在し,その表面は極めて反応性に富み,固体バルクの性質とは大きく異なる.この特性を利用すれば,固体表面上にバルクの性質と全く異なる物質を創製することができると期待される.みかたを変えればそれは表面新化合物とも捉えることができる.これらの点から,表面は特異な反応場として働くことが期待される.実際,Au/TiO_2上のAuはバルクの性質とは全く異なる極めて高い反応性を有することが見出されている.この表面場の効果にナノサイズの細孔という特殊場の効果を加えてやれば,更に特異な性質をもつ物質を表面上に合成(反応活性サイトを構築)することができるものと期待される.我々はこういう観点から,ナノサイズの細孔中にイオン交換された金属イオンの特異吸着現象の検討を試みてきた.その過程において,銅イオンでイオン交換したMFI型ゼオライト(CuMFIと略記)を真空熱処理した試料が室温で窒素分子と極めて強く相互作用する現象を世界で初めて見出した.この吸着サイトは一価の銅イオンであり,MFI型ゼオライト中で極めて安定であることがわかった.更に,CuMFI中のある特定のサイトにイオン交換された一価銅イオンが室温での窒素吸着現象に対して活性サイトとして働くことも明らかにできた.この銅イオンは三配位の状態をとることも提案した.また,このイオン交換サイトに選択的にイオン交換する方法も開発した.この窒素の吸着現象は室温で数十秒以内に起こることも明らかにした.この特異な吸着現象を利用すれば,本試料の産業的な応用も期待できる.更に,これらの研究過程で,室温での水素吸着・活性化の現象も見出した.この水素吸着の研究では,本研究助成によって購入したMCT検出器を取り付けたFT-IR装置が極めて有効に機能した(本装置無しではなしえなかった実験である).現在,この水素吸着サイトの解析も進めている.また,異なる空間サイズを有するMCM-41試料やTiO_2試料に金属イオンをイオン交換し,それらの吸着特異性についても研究を行い,興味ある現象も見出した.これらのいずれの実験も高エネルギー物理学研究所の放射光利用施設での共同利用実験を利用して行った.以上のように,ナノサイズの細孔を利用した新物質触媒による窒素分子の活性化と触媒機能制御に関して,有益な情報を明らかにできた.
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