研究概要 |
表面をアミド基で修飾した金ナノ粒子を設計・合成し,これら金ナノ粒子のアニオン認識機能と分子認識現象にともなう光学特性変化について評価した.アミド修飾金ナノ粒子は,アニオンをトリガーに凝集状態を形成し,このとき生じる色調変化を通じてアニオンを検出できることを明らかにした.しかし,これら金ナノ粒子は水溶性に乏しく実用性にかけることから,親水性の生体分子で表面を修飾した金ナノ粒子の合成法について検討した.グルコースなど糖で表面を保護した金ナノ粒子の合成法を開発し,中でもグルコース保護金ナノ粒子は,従来のクエン酸保護金ナノ粒子に比べ分散安定性に優れ,緩衝溶液中においても析出・沈殿しないことがわかった.そのHEPES緩衝溶液(pH7.4)に各種アニオン(F^-,Cl^-,Br^-,I^-,H_2PO_4^-,AcO^-,NO_3^-)を添加し,その吸収スペクトル変化を比較した.アニオンの添加量が増すにつれて近赤外領域の吸収強度が増加し,溶液の色は赤から青へと劇的に変化することがわかった.このようなスペクトル変化は,金ナノ粒子が凝集し,多重極子の励起にともない共鳴周波数が低エネルギー側にシフトしたことが原因であることを電磁界解析(T-matrix法)から明らかにした.また,動的光散乱光度計を用いた測定からも,アニオンの添加後100nm程度の凝集体が形成されていることを確認した.また,F^-に対して最も鋭敏なスペクトル変化を示すことから,F^-の比色検出薬への応用が期待できることがわかった.さらに,1mMのピリジン水溶液に金ナノ粒子の凝集体を添加し,ラマンスペクトル(λ_<ex>=785nm)を観察した.金ナノ粒子を添加する前には全く観察されなかったピリジンの環呼吸振動が,1035cm^<-1>と1005cm^<-1>に観察されるようになり,グルコース保護金ナノ粒子はラマン増感剤への応用も期待できることがわかった.
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