配分額 *注記 |
14,500千円 (直接経費: 14,500千円)
2005年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2004年度: 3,700千円 (直接経費: 3,700千円)
2003年度: 7,100千円 (直接経費: 7,100千円)
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研究概要 |
本研究の遂行により,以前はその蛋白質構造や機能発現機構が明らかではなかった鉄代謝制御蛋白質(IRP2)と鉄濃度依存性転写因子(Irr)について,共鳴ラマン,紫外可視吸収,パルスラジオリシス等の物理化学的手法を駆使して,以下の点を明らかにすることができた. 1.ヘム鉄へのCys残基の配位の分光学的確認とヘム近傍構造の検討 IRP2,Irrともに鉄が3価の状態のヘムはHeme Regulatory Motifとよばれる配列中に存在するCys残基に配位することを,共鳴ラマンスペクトルを用いてそのFe-Cys結合の伸縮振動を観測することで,分光学的に初めて確認した.また,そのFe-Cys伸縮振動の波数から,ヘム-Cys間の結合は,従来報告されているCys配位のヘム蛋白質の結合よりもはるかに弱いことを明らかにした. 2.ヘム鉄の酸化状態に依存したヘム軸配位子交換 いずれの蛋白質もヘム鉄の還元により軸配位子であるCysは解離し,その代わりにこのCys残基付近に位置するHisが配位することを,紫外可視吸収,共鳴ラマンスペクトルを用いて分光学的に明らかにした.共鳴ラマンスペクトルにおけるFe-His伸縮振動の波数は中性のHisが配位していることを示し,酸素貯蔵ヘム蛋白質であるミオグロビンの値と類似であった.一方,CO付加体におけるFe-CおよびFeC-O伸縮振動の波数は,ヘム鉄に配位した気体分子と周辺のアミノ酸残基との相互作用は弱い場合に対応し,ミオグロビンのように安定な酸素付加体は形成しないことが示された.さらにパルスラジオリシスの実験から,この軸配位子置換の際には過渡的にHisが配位した5配位のヘムが存在し,このHis配位5配位ヘムに分子状酸素が結合することで,ポリペプチドの酸化修飾やその分解につながる活性酸素種が産生されることを提案した. 以上の結果は,これら2つの蛋白質の機能発現機構の解明において重要な指針を与えると考えられる.
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