配分額 *注記 |
15,000千円 (直接経費: 15,000千円)
2005年度: 4,400千円 (直接経費: 4,400千円)
2004年度: 5,100千円 (直接経費: 5,100千円)
2003年度: 5,500千円 (直接経費: 5,500千円)
|
研究概要 |
本科学研究費補助金の援助によって、リン酸化タンパク質・ペプチドの分子認識化学は基礎と応用の両面において大きく進展した。 まず第一に、我々の人工レセプターでの認識過程の熱力学や認識構造をITC測定やX線構造解析から明らかにすることが出来た(J.Am.Chem.Soc., 126, 2454-2463(2004))。二核亜鉛錯体の亜鉛イオン2個が一つのリン酸アニオン部位を協同的に捕捉していることが明瞭に示され、また認識の熱力学はエントロピー駆動の吸熱反応であることが示された。さらに、これらの人工レセプター(ケモセンサー)は、リン酸化が関与する酵素反応(タンパク質脱リン酸化や糖転移酵素)のリアルタイム蛍光センシング(Angew.Chem., Int.Ed., 45,665-668(2006))や超分子ヒドロゲル中での分子認識素子(J.Am.Chem.Soc., 126, 12204-12205(2004), J.Am.Chem.Soc., 127, 11835-11841(2005))、さらにはゲル電気泳動のリン酸化タンパク質選択的な蛍光染色剤として応用できることを明らかとした(Chem.Lett., 2004, 1024-1025)。 また、より大きな進展は多点認識(架橋)型の人工レセプターの開発に成功したことである。すなわち二つの亜鉛錯体間の距離をスペーサーユニットによって調整することにより、二カ所にリン酸化部位を有するペプチドに対する高い親和性での選択的認識が可能となった(J.Am.Chem.Soc., 125, 10184-10185(2003))。実際のタンパク質表面においても特に受容体型のタンパク質キナーゼ(例えばインスリン受容体)などは多価のリン酸化を受ける(ハイパーリン酸化)ことが知られており、我々の人工レセプターはこれらを認識・センシングできる初めての例である。また、ごく最近では、この架橋認識が可能な人工レセプターを利用すると、リン酸化タンパク質/タンパク質間の相互作用を阻害できることを発見した(J.Am.Chem.Soc., 128, 2052-2058(2006))。この結果は、人工レセプター分子が単にゲスト認識センサーとしてだけでなく、タンパク質間相互作用の阻害・調整(モジュレーター)素子としても機能することを期待させるものであり、今後の展開が注目される。
|