配分額 *注記 |
14,500千円 (直接経費: 14,500千円)
2005年度: 4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
2004年度: 3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2003年度: 6,800千円 (直接経費: 6,800千円)
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研究概要 |
本研究課題は,バルクゲルと同じ化学組成を持つナノ架橋体(マイクロゲル又はナノゲル)を合成し、バルクゲルの体積相転移(膨潤・収縮)を,(1)ナノ架橋体の粒径変化および(2)直鎖状高分子電解質のコンホメーション変化と比較しながら,架橋高分子(ゲル)の体積相転移の分子論的本質を見極めることを目的とした。具体的には、N-isopropylacrylamide(NIPA)系高分子網目に酸、塩基および酸・塩基両者からなるイオン基を導入した電解質ナノ架橋体を供試料として,動的光散乱・静的光散乱・電気泳動光散乱実験を行い、pH、温度,イオン強度を変化させた場合の粒径(流体力学半径と慣性半径)を詳細に調べ、架橋体の荷電状態(電気泳動移動度)と比較した。さらに,その結果をナノ架橋体の構成員である鎖状高分子電解質の結果と比較した。一方で,ナノ架橋体と反対符号の電荷を持つポリイオンとの複合体形成(架橋分子・鎖状分子間相互作用),異符号電荷を持つナノ架橋体間の複合体形成(粒子間相互作用)に関する研究を行った。また,中性高分子網目中に球状荷電を閉じ込めた新たな高分子電解質ナノ架橋体の合成法を確立するための基礎研究として,中性高分子/タンパク質(球状荷電)系の複合体形成に付いても予備的な実験を開始している。以上の結果は,我々が提案した分子論的な仮説『ゲルの体積相転移は,架橋高分子鎖間の斥力(同符号電荷間のCoulomb力)と引力のバランスが崩れた場合に起こり、引力としては疎水性相互作用、水素結合、van der Waals力、異符号電荷間のCoulomb力に分類できる:(a)Ilmain, F. ; Tanaka, T. ; Kokufuta, E.Nature 1991,349,400;(b)Kokufuta, E.In : Physical Chemistry of Polyelectrolytes ; Radeva, T., Ed. ; Marcel Dekker, Inc., New York, Basel,2000;Chapter 17』を用いて明確に説明できることが分かった。なお、これらの結果を応用して、高分子電解質系グラフト共重合と等価な物性を有するイオン性ナノ架橋体の合成法を考案し、本研究分野の新たな展開を試みつつある。
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