研究概要 |
本研究は,代表的な多軸制御工作機械である5軸制御マシニングセンタ及び複合加工機に固有の旋回軸系に関係する幾何学的な偏差の同定方法の開発,及びその同定方法に基づいて機械及びNCプログラムを補正する方法を開発することを目的として行った。 本研究では,世界各国における5軸制御工作機械の開発動向を調査し,その結果に基づいて構造形態を分類し,24種類の形態が存在することを明らかにした。この形態の数は,理論上考えられる数よりも遙かに少ない数である。 次に,5軸制御工作機械に存在する偏差の決定方法について検討し,現在,使用されているISO10791-1の規格に規定されている主軸頭旋回形5軸制御マシニングセンタの偏差の測定方法を吟味した。 以上の準備のものとで,まず,旋回軸1軸を含む同時3軸制御時の円弧補間運動の軌跡をボールバーで測定し,その軌跡の偏心量から5軸制御マシニングセンタに固有の偏差を,数式を利用して求める方法を提案した。実際にボールバーを使って測定した軌跡から求めた偏心量の値を使って幾何偏差を同定できることを示した。 さらに,その同定結果を利用して補正を試みたところ高精度な軌跡を得ることができることを実証した。また,同時4軸制御運動を利用して偏差を同定する方法についても検討した。特にこの方法は,同時3軸制御では4通りの測定が必要であったのに対して2通りの測定を行い,その偏差の軌跡から一度にすべての偏差を同定できる点で優れている。この方法を使用して同定した偏差は,同時3軸制御による方法と同程度の精度であることが明らかになった。
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