研究概要 |
次世代に実用化が嘱望されている線幅0.1μmのギガビット級超LSIの量産の為には,サブミクロンからナノメートルオーダの位置決め精度が高速で実現できる超精密位置決めステージが必要不可欠であるとの認識に基づき本研究は,ナノメートル位置決めのための摩擦駆動機構の確立を目的とした. 2年間の研究の結果,摩擦駆動部における摩耗特性の予測法及び制御のためのモニタリング法を確立し,その有効性を実証するとともに摩擦駆動部における摩耗粒子の挙動解析に基づく摩耗粒子制御技術を考案しその有効性を実証した.これらは,ナノメートルオーダの位置決め精度が高速で実現できる超精密位置決めステージを実現するための重要な科学的知見と新しい技術である、具体的な研究成果は,以下の通りである. 1.摩擦駆動中の接触面における接触の過酷さを表すパラメータとして,駆動中常時制御されている超音波モーターの指令電圧の変動値E_fを導入し,この値によりマイルド摩耗-シビア摩耗遷移の予測が可能であることを理論と実験により明らかにした. 2.摩擦駆動部に介在する摩耗粒子に働く付着力は静電気力が支配的であることを実験及び計算によって明らかにした.アルミナを摩擦駆動部に用いた場合,1ミクロンの摩耗粒子に与えられる静電気力は,摩耗粒子間に働くファンデルワールスカの505倍になる. 3.超音波モータのチップ材料の変更及び摩擦駆動部への除電及び空気の吹きつけを行うことにより非共振型超音波モータ駆動ステージの位置決め精度劣化を抑制し,10nmの位置決めを従来機の530倍に向上できることを実証した.
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