研究概要 |
1)スライダの接触振動の計測と分析 低浮上領域で見られる浮上ヘッドスライダの跳躍振動の特徴と原因を明らかにするために,実験的にスキャニングレーザドップラ(LDV)振動計,2チャネルLDV等を用い,スライダがディスク面に接触したときの挙動を詳細に測定した.その結果,スライダのピッチ角を大きくし,ディスク面との接触面積を小さくすると跳躍振動のヒステリシス領域が低減すること,スライダの跳躍振動は後端接触による吸着力と摩擦力により拡大すること,スライダの跳躍振動の振動モードはピッチ振動であり,ロール振動は無視できることを明らかにした. 2)数値シミュレーションによるスライダの接触自励振動の解明と最適設計条件の解明 スライダ吸着接触時に生じる跳躍振動現象を明らかにするために,最近の粗さの小さいディスクにおける接触・吸着特性を明らかにし、次ぎにこの接触力特性を用い,空気膜剛性の非線形性を考慮し,スライダのニアコンタクト領域の接触振動現象を数値解析した.その結果,ニアコンタクト領域で臨界浮上すきまを極力小さくするには,摩擦係数,吸着力,接触剛性を小さくし,前後空気膜剛性を大きく,また後側空気膜剛性を前側空気膜剛性に比べ大きくすればよいことを明らかにした. 3)球面スライダによるディスク面衝突時における接触力と吸着力の実験的同定 球面模擬スライダを静止磁気ディスクに衝突させ,その挙動をレーザドップラ振動形により測定し,スライダのディスク面との衝突時における変位、速度、加速度の変化を詳細に明らかにすると共に、動的接触力はヘルツ接触理論で予測でき,最大吸着力は静的メニスカス力にほぼ等しいことを明らかにした.また,潤滑膜の固定層配分が多いUV処理した潤滑膜のほうがやや吸着力が小さく完全なメニスカスが形成されないこと,および曲率半径が大きく,衝突速度が大きい方が,メニスカスカが小さくなり十分なメニスカスが生じにくいことを明らかにした. これらの研究は世界的に最先端の成果であり、以下に示す論文1は平成16年度日本機械学会論文賞を受賞した.
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