研究概要 |
本研究では,高剛性で,広い作業領域が確保可能な新たなパラレルメカニズムとして,平面運動は平面案内テーブルで,空間運動は3自由度空間パラレルメカニズムで創成する5自由度の工作機械用機構を提案した.用いる3自由度空閥パラレルメカニズムの連鎖は,作用する曲げモーメントの方向を考慮した板状の節を用い,また,直進対偶を両端支持することで,従来のパラレルメカニズムに比べ高剛性化が図れている.次に,パラレルメカニズムをはじめとする多自由度機構の出力部に作用する任意方向の負荷に対して,入力部の弾性変形に起因して生じる位置・姿勢決め誤差の最大値を求める方法を提案した.同方法を用いて工作機械用機構の主要部分である3自由度空間パラレルメカニズムの解析を行い,その位置・姿勢に対する出力変位誤差の変化の傾向を示すとともに,姿勢角の方向を考慮すれば同一の負荷に対しても誤差を抑制し得ることを明らかにした.また,パラレルメカニズムの連鎖に用いる板状の節の効果に関しても同方法で評価可能とした.次に,以上の結果に基づき,工作機械用機構を設計するとともに,実際に製作を行った.製作した機構は100mm立方の物体が加工可能となるように,商さ800mm,幅600mm程度の寸法を有する.実際に,同機構を用いて多自由度加工を行い,提案する機構の実用性,構築した制御プログラムの妥当性を確認した.次に,加工誤差の評価法として,パラレルメカニズムの入出力比が,その位置・姿勢とともに変化することに注目し,機構の入出力関係を表すヤコビ行列から,機構の各姿勢における任意方向への入出力比の最大値を評価する手法を提案し,製作した機構に関して,その変化の様子を明らかにした.また,実際に加工機構による加工誤差を測定し,得られた評価結果と比較して,機構の入出力比が加工誤差に大きく影響することを確認した.さらに,各姿勢における入出力比の評価結果を用いて,加工経路の刻み幅を決定する工具経路生成法を提案した.同方法を用いて,以上で構築したプログラムを用い加工シミュレーションを行った結果,加工誤差を抑制でき,その有用性が確認された.次に,同機構の校正による加工誤差の補正に関して応答曲面法を用い,少数位置での測定結果から作業領域全体にわたる校正を可能とすることを試み,加工誤差の分布の推定,さらに,機構誤差を補正する入力値を求める方法を提案し,実際にシミュレーションによりその有用性を確認した.
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