配分額 *注記 |
11,500千円 (直接経費: 11,500千円)
2005年度: 1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2004年度: 2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2003年度: 6,900千円 (直接経費: 6,900千円)
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研究概要 |
スラリージェットによる固体粒子衝突摩耗を利用した硬質皮膜の表面強度評価法(MSE法)の確立を目指して,異なる方式のMSE試験装置でPVD硬質皮膜の摩耗試験を行い,以下の結果を得た. 1.TiN単層膜は製膜時の基板温度が高くなるほど皮膜表面の塑性変形硬さが小さくなるが,摩耗速度が小さくなった.TiN皮膜の摩耗速度は硬さよりも表面に露出している結晶の配向性に影響される.すなわち,高温での成膜において支配的である{111}配向は,{100}配向より高い摩耗速度を示す.これは結晶面での劈開破壊の大きさと相関があると考えられる. 2.成膜条件の異なるCr-N膜の摩耗速度は,皮膜の塑性変形硬さと弾性率の比と良い相関関係を示す. 3.PVDの二層膜(TiN+TiCN膜)のMSE試験では,各皮膜の品質が良好である場合摩耗速度は単層皮膜のそれらと同じであるが,表層のTiCN膜に成膜時の欠陥が多いと摩耗速度は単層のそれらとは異なることがわかった. 4.新たに皮膜の表面強度を単位投射粒子量あたりの摩耗速度で評価するために,ポット式MSE試験装置を試作した.その結果,この方式でも皮膜と母材を明瞭に分離して,皮膜の摩耗速度を単位投射粒子量あたりの摩耗量で評価できるようになった. 5.MSE試験法によりTiNやCrNの硬質皮膜の摩耗速度のランキングは,海外で多用されている評価法でのそれらよりも,皮膜間の違いが一層明瞭にあらわれた. 以上の結果から,本研究で提案しているMSE試験による硬質皮膜の評価法は,簡便また高信頼性で表面強度を評価でき,非常に有用であることとの結論を得た.また,スラリージェットによる脆性材料の微細加工を実現するための基礎的実験CNC-MSE装置を用いて行い,ガラス表面の加工がサブミクロンのクラックの発生によりナノスケールで生じることを明らかにして,加工への応用の可能性が大きいことを確認した.
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