研究概要 |
粒子群による輻射エネルギーの散乱は,粒子数密度が高くなるにつれ,まず,散乱エネルギーの強度低下がごく小散乱角の範囲に限定して現れるが,回折領域外の散乱角の大きい領域にも強度低下は現れない.粒子数密度が高くなると,小散乱角域での散乱エネルギーの強度低下が顕著になるとともに,散乱角の大きい領域に向かって散乱エネルギー強度が低下する領域が広がっていく.回折領域の端にまで強度低下の影響が及ぶようになると,ほぼ全散乱角範囲に強度低下が現れるようになり,さらに粒子数密度が高まると,全散乱角範囲で散乱エネルギー強度は一層低下していく.このことは,散乱体数密度が高い状況では,単一粒子による散乱パターンをベースとする位相関数は使用できないことを意味している.また,粒子数密度に関しては,入射エネルギーの進行方向に粒子間隔を広げるよりも,それに直角の方向に粒子間隔を広げたほうが多重散乱の影響が消えやすく,後者の場合についてはどの程度の粒子間隔で多重散乱の影響が消失するのかをほぼ把握できた.また,散乱体が単分散の場合には,数密度を高めた場合にまず小散乱角の領域に影響が現れ大散乱角側へ影響が広がっていく傾向は不明確になるが,非常に数密度が高い場合に全散乱角範囲で散乱エネルギー強度が低下傾向は同じであった. 多重散乱が無視できる状況で多くの同一形状の3次元非球形散乱体がランダムな姿勢で存在する場合,径を一定に保って長さを伸ばしていくと,等価球集団の平均径,径の分散は大きくなるが,細長くなるほど,平均径,径の分散の変化は鈍くなる傾向があることが明らかになった.また,回転楕円体である場合には,等価球集団の径の分散は小さく,平均径は平均投影面積に等しい球の径にほぼ等しい. 電磁方程式の直接差分解法は,Mie散乱理論では対処できなかった多重散乱の影響を正しく考慮できるが,電磁気学の概念でエネルギーの流れる方向と強さを表すとされる電場Eと磁場Hの外積の実効値は,各方向に流れるエネルギーをベクトル合成したものであり,方向別に単位立体角当たりのふく射エネルギー流束を表現するふく射強度の概念を如何に結び付けるかが未解明であった.この問題については,近接界から遠方界を求める等価定理の考え方を応用すれば,粒子群全体のうちの着目した部分の粒子集団によって散乱されたふく射エネルギーのふく射強度を求められることを解明した.
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