研究概要 |
本研究では,表面筋電図からの運動単位の分離とその活動の可視化のため,以下のように研究を実施した. 1.運動単位の分離手法の改良 統計モデルの導入が容易な過完備基底を用いた分離手法の検討を行った.本手法を実計測データに対して適用し,ブラインドデコンボリューションと同等の分離性能を持つことを確認した.また,観測チャンネル数が,運動単位数よりも少ない場合であっても,計測条件に依存するものの,それぞれの運動単位に分離できる可能性があることを確認した. 2.統計モデルを利用した分離手法の有効性の検討 boosting機構に対してKDAを利用した認識システムの検討を行い,SVMなどの既存の手法と変わらない識別性能が得られることを確認した.また一般的に,汎化能力を持たせるためには,クロスバリデーションのような多大な時間を要するパラメータ選択を行うが、それに変わる簡便な指標を考案し,計算コストをほとんどかけずに適切なパラメータ選択が可能であることを示した. 3.分離された運動単位の活動の3次元時系列位置推定 有限要素法を用い,分離された個々の運動単位に由来する皮膚表面上の電位より,運動単位の脱分極位置の3次元位置推定を行った.これにより,運動単位を構成する筋線維の3次元位置および,その時間変化を推定できることを確認した.また,電流強度の時間変化を追うことが可能となり,神経支配帯の大きさの推計が可能であることが明らかになった.また,これらによって,表面筋電図を計測する多チャンネル電極が満たすべき仕様を明らかにした. なお本研究は,平成15年度に神戸大学工学部小谷学助教授を研究代表者として進められたものであるが,平成16年5月に小谷先生が急逝されたため,急遽代表者の交代を行った.小谷先生の貢献は上記成果全般に渡っていることをここに記す.
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