研究概要 |
本研究では,種々の長期間の環境促進実験を行い,材料および部材の劣化特性に与える環境要因の絞り込みと,構造物のライフタイムの間の長期間の劣化特性に関する基本データをまず収集した.主として,種々の環境要因についての長期間の環境促進実験を行い,暴露試験や理論的な考察から,劣化特性や寿命推定を行えるようにした. その後,性能設計においてライフサイクルアナリシスの考え方を取り入れる手法を検討した.すなわち,構造物およびそのネットワークレベルの建設,維持管理,廃棄,取り替えまでのライフサイクルを考えて,コスト,安全性・信頼性および環境負荷を考慮した設計システムを考案した. 以下の環境促進実験を行い基礎的データを収集し,長期間の劣化特性を把握するとともに,ライフサイクルでの評価が行えるようにモデルを構築した. 1)鋼材:供用70年後撤去された鋼橋の桁から切り出した劣化鋼板に塗装系(A, B, C, I塗装仕様)の再塗装処理を行った供試体を製作し,環境促進実験を行った.その結果と従来の暴露実験結果を使い,飛来塩分量をパラメータとした促進倍率を求めて再塗装の劣化モデルを作成した. 2)平成15年度に購入した酸性雨複合サイクル実験装置を用いて,溶射およびめっきの金属防食処理した鋼板の酸性雨環境促進実験を行った.その結果に基づいて酸性雨環境下における橋梁用金属防食系の劣化モデルを作成した. 3)ゴム支承:平成15,16年度に行った5つの環境要因(塩水噴霧複合サイクル,酸性雨複合サイクル,熱老化,光劣化,オゾン劣化)の環境促進実験結果などに基づいて劣化モデルを作成し,設置位置の環境を考慮したライフサイクルアナリシスを行い,ゴム支承の劣化寿命を推定した.また,耐震に対する性能照査設計法を提案した. 以上1),2),3)の結果を総合的に検討し,環境要因,構造部材,防食,設置位置を考慮した交通基盤施設のライフサイクルアナリシス手法を提案した.
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