研究概要 |
本研究は,鉄筋コンクリート造の十字型,ト型,L字型の柱梁接合部に関する,統一的な力学モデルを構築し,その信頼性を検証し,モデルに基づく合理的な柱梁接合部の損傷評価法を提案しようとしたものである。 1.提案されているモデルに基づいて,コンクリート強度以外に特に損傷や強度に影響を及ぼすと予測されている実験パラメータに関する影響の度合いの検討を行い,また,実験結果との比較によりモデルの妥当性を検証した。 2.現行の設計基準を満たすように設計され,梁が柱に対して偏心した十字型柱梁接合部試験体3体の水平加力実験を行った。偏心を有する接合部架構の最大耐力は無偏心のものの94%に低下した。詳細な変形分布と損傷状態を測定し,偏心により梁が加力面外方向に変形することにより梁が偏心している側のコンクリートの損傷の増加,梁主筋の歪の偏り等が生じていることを明らかにした。また,偏心している側の接合部せん断補強筋で最大耐力が無偏心のものの97%まで改善された。 3.提案している柱梁接合部の曲げ抵抗機構モデルの検証,および柱梁接合部まわりにおける各部の応力と変形成分についての実験データの収集を目的として,加力方法が異なる同形状・同配筋の柱梁接合部試験体6体の静的漸増載荷実験を行った。梁曲げ降伏が生じる架構においては,接合部破壊が生じる場合にはひび割れにより分割された接合部の回転による変形が卓越し,梁曲げ破壊の場合は,梁のたわみおよび梁端部の回転による変形が卓越していた。また,接合部内に配筋された柱・梁の主筋の付着応力の差によって,最大層せん断力および破壊モードに差が生じていた。 4.鉄筋コンクリート造柱梁接合部の弾塑性挙動を考慮したモデルを開発し,弾塑性骨組解析へ適用するための基礎的検討を行い,柱梁接合部を構成するコンクリート,鉄筋,付着の構成則を模擬した非線形1軸ばねからなるモデルの提案を行った。
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