研究概要 |
わが国では,道路は高度経済成長を支える重要な社会基盤施設として位置づけられ,急ピッチで整備が進められてきたが,その際,歩道は車道の付加構造物として設計,施工される傾向にあり,歩行者の安全性や快適性が強く意識され出したのは昨今のことである.そのため,歩道には,未だ,急勾配や段差といった車いす使用者にとって移動の妨げとなる交通バリアが多く存在している. 段差や勾配が車いすの移動に及ぼす影響について研究され始めたのは,1990年代以降である.現在では,これらの先行研究をもとに,交通バリアとなる段差や勾配の構造基準である「道路の移動円滑化整備ガイドライン」が作成された.しかしながら,この構造基準は,車いすによる通行が可能か不可能かを示すだけであり,車いす使用者の快適性を表わしているとは言えない. 歩道に交通バリアが存在すると,車いすによる移動が困難になることから,歩道のバリアフリー整備では,対象地域のすべての交通バリアを解消することが最も望ましいが,これは,財政的に難しいことであるため,歩道を段階的に整備することが必要不可欠となる.しかし,現状では,クレームによる局所的な補修や交差点部などの部分的な改修が多く,歩道の連続性や車いす使用者の利便性や快適性を考慮した面的な整備が行われていない.また,大都市では,様々なまちづくり計画が存在し,整備予定路線が錯綜していることから,歩道を段階的に整備するために必要な路線の重要度が不明確となっている. 本研究では,まず,車いす移動負荷を定量的に評価する方法を開発した後,交通バリアと車いす移動負荷量などの情報を一元管理し,車いす使用者と道路管理者に対して有用な情報を提供することができる「歩道のバリアフリー化支援システム」を開発した. さらに,札幌市都心部において,歩道を段階的に整備するためのバリアフリー整備計画を立案し,それに対する本システムの有用性について検証した.
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