研究概要 |
酸化物系機能性セラミックスは,導電体として用いられ,産業界にとって重要な材料として応用が広がっている.様々なドーパントの添加と,それに伴う酸素イオン空孔(V^<●●>_O)や侵入型酸素欠陥(O^"_i)の導入によって,これらの機能特性が変化する.本研究では,SOFCのカソード候補材料であるLa_XSr_<1-X>MO_<3-δ>(M=Fe, Co),および液晶ディスプレイの透明電極ITOについて,絶対零度付近から高温までの定圧熱容量(C_p)測定を行い,V^<●●>_OあるいはO^"_iの導入に伴う,相転移や格子振動状態の変化を検討した.また,La_XSr_<1-X>MO_<3-δ>については,極低温のC_pの測定結果からデバイ温度(Θ_D)を決定し,そのΘ_Dに基づいてデバイ関数から定容熱容量(C_v)のを求め,V^<●●>_Oの導入に伴う格子振動状態の変化を検討した. La_XSr_<1-X>MO_<3-δ>では,La^<3+>をSr^<2+>(Sr^'_<La>)で置換すると減少した正の電荷を補償するためV^<●●>_Oが形成される.V^<●●>_Oを含むLa_XSr_<1-X>MO_<3-δ>では,磁気転移点や構造相転移点が低温側へ移行することが分かった.また,V^<●●>_Oの増加に伴い,C_vが増加することが分かった.このC_vを積分して定容状態での298Kにおける振動のエントロピーを計算し,V^<●●>_O濃度で差分することにより,V^<●●>_O生成の振動のエントロピーを見積もると,La_XSr_<1-X>MO_<3-δ>では58.65J・K^<-1>・mol^<-1>,La_XSr_<1-X>MO_<3-δ>(M=Fe, Co)では42.86J・K^<-1>・mol^<-1>となった.この大きなエントロピーがV^<●●>_Oを生成させ,導電性を付与すると考えられる. ITOでは,In^<3+>をSn^<4+>(Sn^●_<In>)で置換すると増加した正の電荷を補償するためO^"_iが形成される.C_p測定の結果,Sn^●_<In>とO^"_iが短範囲に規則して,振動のエントロピーが減少することが分かった.この短範囲規則化が,バンドギャップ中のSn^●_<In>準位とO^"_i準位を縮退させ,可視光の吸収を防ぎ,高い透明性と伝導性を兼備させていることが判明した.
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