研究概要 |
TiAl合金は,次世代の軽量高温材料として注目されている。この材料はα_2Ti_3Al相とγTiAl相からなる層状組織をとる。この材料は,層間隔を微細化すると強化される。しかし,層間隔がある程度以上減少すると強度が上限に達してしまう。本研究では,強化の上限が生ずる原因を検討し,更なる強化の方策として次の成果を得た。 1.層間隔λの減少にともない,γ層厚さが限界値(50nm)以下になると,α_2/γ界面のミスフィット転位が消失し,α_2/γ界面は弱い界面となる。その結果,降伏応力σ_yと1/√<γ>の関係はHall-Petch関係からずれ,λの減少にもかかわらずσ_yの増加が停滞する。 2.λが減少してもα_2/γ界面にミスフィット転位を導入できれば,TiAl合金の降伏応力を向上させることができる。ミスフィット転位の導入限界はα_2とγ層間の格子ミスフィットの大きさで決まり,強化の上限を上げるには,約1.5%の格子ひずみが必要である。 3.高温変形では,層界面の合一消滅による層間隔粗大化と層状組織の粒状化が,主たる組織劣化要因である。これらは,層界面エネルギーが駆動力となり,層間隔が微細なほど駆動力が大きい。層界面の移動がこれらの組織変化の素過程であり,界面易動度を下げれば,組織を安定化できる。 4.TiAl合金の層状組織に含まれる4種の界面の中で,α_2/γ界面が熱的に最も安定である。α_2/γ界面を多く含む材料を作成し,この材料では層状組織が安定で,クリープ変形抵抗が大きいことを確認した。
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