研究概要 |
「イオン性融体からのCo析出の電気化学的解析」では,筆者らの従来の研究によってAlCl_3-BPC+CoCl_2のイオン性融体から純Coを析出する条件を明らかにしているが,析出したCoの純度をより高くし,磁気特性改善を考慮した合金電析の可能性を検討するために,CoCl_2-BPCイオン性融体からのCo電析について検討した。CoCl_2、とBPCのモル比が1:2〜1:1の範囲で融点が80℃以下のイオン性融体を形成するが,電析のためにはモル比が1:2以下であることが必要であ.り,98%以上のきわめて高い電流効率でCo電析が起こることが明らかになった(発表論文1)。 「Si/Ti/Au/Al薄膜へのバリア層のないポーラスアルミナの作製」では,磁気媒体としての実用性を考慮して,Si基板上のAl薄膜にバリア層のないポーラスアルミナを形成することを試みた。Si基版との密着性,アルミナ膚が最下層まで生成した場合の耐酸化性、(めっきにおける電気伝導性の確保)の観点から,Si基板上にTi(50mn),Au(206nm),.Al(2・m)の複合層を持つ薄膜を作製した。ポーラスアルミナは報告されているアノード電解条件を参考に2段階のアノード酸化により規則性Pの高いポーラス層を形成できること,定電位での電解条件ではポーラス層がAu層まで達すると電解電流の減少と増加が起こりバリア層が、ほとんど生成しなくなること,ポアワイドニングによって残存するバリア層がほぼ完全に除去できることなどが明らかになった(発表論文2)。 「ポーラスアルミナ中へのイオン性融体からのCo電析」では,上述の研究成果に基づいて,AlCl_3-BPC+CoCl_2,のイオン性融体からSi基板上のポーラスアルミナへのCo電析を試みた。ポーラスアルミナ層を持たないAu薄膜へのCo電析のボルタモグラムとポーラスアルミナ層がある基板のボルタモグラムの比較から,十分にバリア層を、除去したポーラスアルミナでは過電圧の増加がほとんどなく,ポア層の厚さが500〜700nmと小さいことからポア内の液抵抗による電圧降下もほとんどないことがわかった。ポア底のバリア層を全てのポアで完全に除去することは出かなかったため,ポア全体に均一に電析するためにはポアの深さよりもやや多目のCoを電析することによりほとんどのポアにCoを充填することが出来た。今後,バリア層の完全除去法め確立,充填されるポアの割合を100%に近づけるための条件を検討することが必要である(発表論文3)。
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