研究概要 |
近年世界各国で開発が期待されている次世代超音速機は成層圏レベルの高度を飛行することになり,これらの排気ガス中のNOxがO_3に及ぼす影響が危惧される.本研究では,航空機から排出されるNOxとO_3の挙動を調べた.特に排気プルームと周囲雰囲気中のオゾンとの反応を簡略な場で調べるため,ボックスモデルを用いた数値計算を行った.その結果,排気ガスによりオゾン濃度は減少し,その回復には数日要すること,オゾン濃度の減少量は排気プルームが昼間に排出されるよりも夜間に排出される方が少ないことを明らかにした.また,排気プルーム中においてはOHのNOxを減少させる反応のオゾン濃度に対する感度は正の値を持っており,オゾン濃度を増加させる作用を及ぼしていることがわかった.一方,次世代空気吸い込み式エンジンの候補として考えられているスクラムジェットエンジンに液体燃料を適用するための基礎実験を行った.液体燃料の微粒化の促進および貫通高さの制御を目的として燃料噴射弁の内径および背圧を変化させた.光学計測により,超音速流中に垂直に噴射された液体燃料の噴霧特性および微粒化特性を定性的に明らかにした.その結果,主流全温400Kにおける噴射口径0.5mmと0.3mmの実験の比較から,貫通高さが大きくても,微粒化が十分になされていないと着火に至らないことがわかった.また,燃料流量を増やしていくと,非燃焼状態から,弱燃焼モード,強燃焼モードを経ずに熱閉塞に至ることが観察された.さらに,0.3mm噴射口径において2300K以下では燃焼が起きていないのに対し,0.5mm噴射口径においては当量比1以上で燃焼が確認された.
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