研究課題
基盤研究(B)
この研究の目的は、植物の2次代謝産物であるポリフェノール物質の、森林生態系における生葉-リター-土壌ループでの挙動を明らかにすることである。樹脂カラムDAX-8を用いて、土壌水の溶存有機物から疎水性画分を抽出した。疎水性の画分に含まれるタンパク質を6N塩酸で高温(120℃)の下に加水分解し、遊離したアミノ酸を高速液体クロマトグラフィーにより定量することにより、土壌水中のポリフェノールに結合保護されているタンパク質濃度を決定した。土壌栄養状態(特にリン)が異なる2つの常緑樹林の土壌水を分析した結果、土壌栄養の貧弱な森林では土壌水に常に高濃度のポリフェノールが存在しており、その濃度と溶存タンパク質濃度には正の有意な相関関係が認められた。これにより、ポリフェノール-タンパク質複合体の存在が強く支持され、栄養状態の違いによりポリフェノール-タンパク質複合体の濃度は異なることが明らかとなった。前者は、地上の樹木が生産する葉の縮合タンニン濃度に、土壌栄養に応じて差が生じることと関係していた。培養実験では、ポリフェノール-タンパク質複合体は非常に強い難分解性を示した。さらに、分解を担う土壌微生物への波及効果も明らかにした。異なる生葉ポリフェノール濃度を持つ5樹種から各5本の反復個体を選び、それらの樹冠下から土壌粗腐植を採集し、その中の各種酵素活性を測定した。フェノール・オキシダーゼ活性と全可溶性フェノール量には、統計的に有意な正の相関が認められた。以上から、樹木が生産するポリフェノールは、土壌あるいは土壌水中でタンパク質と難分解性の複合体を形成し、森林の窒素循環に強い影響を与えることが示唆された。また、土壌可溶性フェノール量とフェノールの分解に関わる酵素活性に正の相関がみられたことから、ポリフェノールは土壌微生物にも影響を与えることが示唆された。
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