研究課題
基盤研究(B)
小胞体ストレスセンサータンパク質の一つであるIREの細胞内ドメインの構造研究を推進して、ストレス感知直後のシグナル伝達のメカニズムの構造的基盤を構築することを目的とした。IREはI型膜タンパク質であり、哺乳類細胞にはIREαとIREβがあるが、酵母はIre1pのみである。IRE1の細胞内ドメインはセリン・スレオニンタンパク質キナーゼドメインとRNaseドメインをもち、活性化時に、自己リン酸化とともにRNaseが活性化して、RNAの分解によるストレス応答シグナルを伝達する。このようなタンパク質キナーゼドメインを通してRNase活性を制御するという例は他の受容体にはなく、IRE1は全く新規なシグナル伝達の制御機構をもっている点に注目した。ヒトIREαとIREβ及び酵母Ire1pの三者について大腸菌ならびに昆虫細胞を用いたタンパク質発現系の検討や精製系の最適化の結果、有望なものとして酵母由来のIre1pのタンパク質キナーゼドメインとRNaseドメインを含むコンストラクトで比較的良好なタンパク質発現を認めた。また、大量発現(2-3L)を試みて、このタンパク質が精製可能であること、比較的に不安定であることを確認した。この試料を用いて、研究室所有の結晶化ロボットにより大規模な結晶化スクリーニングを行った。その結果、再現性に若干問題はあるが、微結晶を得ることに成功した。また、ルーメン内のセンサードメインについても検討して、やはりIre1pのコンストラクトが良好であることがわかった。このドメインについてはドミナントアクティブ型のタンパク質も共同研究者によって得られており、センシングの機構を解明する上で、有力な構造を与える可能性があるので期待している。以上の成果は、今後、このセンサーキナーゼの構造生物学的研究を推進する上での重要な一歩となった。今後、結晶化条件の精密化を行い、構造解析に耐えうる結晶として、三次元構造解析を完成させたい。
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