研究課題
基盤研究(B)
シトクロムc酸化酵素(以下CCOと略)はミトコンドリア電子伝達系の最終酵素であり、細胞呼吸において重要な役割を果たしている。CCOはその活性発現に銅を要求するが、これまでに酵母を用いた研究から、CCOへの銅の輸送に関与する分子として、Cox17pとSco1p及びそのホモログであるSco2pが知られている。近年、CCO活性の著しい低下を伴うミトコンドリア脳筋症の患者から、Sco1p、Sco2p遺伝子の変異が相次いで報告された。一方、我々はこれまでに本学会においてCox17pの遺伝子破壊マウスが、CCO活性の著しい低下を伴い胚性致死となることを報告してきた。そこで本研究では、CCOに対するCox17p、Sco1p/2pの銅輸送分子間の機能的な関連性について検討することを目的とし、これら3つの分子間相互作用、並びにCCO活性不全が最も重篤な障害を引き起こす事が知られる脳神経系におけるそれぞれの発現様式について解析を行った。マウス由来の細胞を用いてCox17p及びCox2p(CCO内で銅イオンの複核中心を形成するサブユニット)と、Sco1p/2pとの相互作用をGST-pu11-down assayにより調べたところ、Cox17pはSco1p、Sco2pと、またSco1p、Sco2pはCox2pとそれぞれin vitroで結合する事が確認された。またマウス脳内各部位についてノーザンブロット分析並びにin situハイブリダイゼーション(ISH)を行い、Cox17p、Sco1p及びSco2p mRNAの発現を生化学的・組織化学的に調べたところ、Sco1pとSco2pは、当初その高い相同性から両者の発現様式は同じ傾向を示すと推測されていたのに対し、Cox17pとSco1pが共にCCO活性の高い部位に高発現しているのに対し、Sco2pは前2者と発現様式が異なる傾向を示すことが明らかとなった。これまでの臨床研究において、Sco1pとSco2pの変異がそれぞれ発症部位や症状においてしばしば異なる事が報告されている。今回、in vitroでの分子間相互作用の検討から、Sco1p、Sco2p共にCox17pに結合し、CCOへの銅イオンの伝達に関与する事が考えられたが、脳の組織化学的な解析の結果から、Sco1pとSco2pは組織特異的に発現が選択され、その結果役割を分担して銅輸送に関わっている可能性が示唆された。
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