研究課題
基盤研究(B)
炎症時の遺伝子の転写に対して亢進と抑制という双方の機能をもつIκB-ζについて、その分子機能、転写制御機構、刺激特異的誘導機構について解析を進めた。その結果、まず、IκB-ζ分子内部のアミノ酸153-187の領域に核移行シグナルが、アミノ酸329-402の領域に転写活性化活性をもつ領域が存在することを明らかにした。また、IκB-ζの過剰発現によって、リポ多糖(LPS)刺激に伴う腫瘍壊死因子(TNF-α)の産生が抑制される一方、インターロイキン(IL)-6の産生が転写レベルで亢進することを見出した。さらに、IκB-ζ遺伝子欠損マウスを解析し、IκB-ζ欠損マクロファージでは、LPS刺激に伴うTNF-αや一酸化窒素の産生は正常マウスと遜色ないものの、IL-6の産生がほぼ消失すること、in vivoでは、LPS刺激に伴うIL-12の産生が障害を受けているのに対し、TNF-αの産生が増強されていることを明らかにした。IκB-ζによってその転写が亢進する遺伝子のプロモーターの解析の結果、IκB-ζによる転写亢進には、NF-κBの結合配列が必須であるが十分でなく、この配列以外のシスエレメントの有無がIκB-ζの機能を左右していることが判明した。また、IκB-ζの刺激特異的誘導機構について、LPSとIL-1β刺激によってIκB-ζ mRNAの安定性が著しく上昇していることを見出した。さらに、IκB-ζ mRNAの3'非翻訳領域に存在する配列が、IκB-ζ遺伝子の転写後修飾機構による刺激特異的発現を決定していることを明らかにした。従って、IκB-ζは自然免疫刺激時に特異的に発現誘導され、一群の炎症遺伝子の発現に必須の役割を果たす一方、別の遺伝子群の発現を抑制する炎症応答の鍵を握る分子の一つであることが明らかになった。
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