研究概要 |
我々研究グループはヒト染色体セントロメア領域をDNAとタンパク質の相互作用によって形成されるDNA/タンパク質複合体としてとらえ、分子レベルにおける機能構造の解析を行っている。セントロメア特異的ヒストンH3変異体であるCENP-Aの解析を行い、CENP-Aの精製法を開発しCENP-Aを含むヌクレオソーム再構成系を構築した(文献6)。これまでに極めて特異性の高い抗CENP-Aモノクローナル抗体の作成に成功した(文献1,11-13)。この抗体が細胞染色のみならず、免疫沈降にもすぐれた特異性を有することを示した(文献5)。間期核から極めて温和な方法を用いてクロマチンを可溶化し抗CENP-A抗体を用いてnativeクロマチン免疫沈降法(N-ChIP)を用いて間期セントロメア複合体の単離・精製に成功した(文献9)。この複合体がこれまでセントロメア構成因子として知られていたCENP-A,CENP-B,CENP-C,CENP-H,CENP-I/hMis6,hMis12を含むことからこの複合体をInterphase Centromere Complex(I-CEN complex)と命名した。プロテオミクス解析によって網羅的にI-CEN complexの構成因子を解析し、約40種類のタンパク質を同定した(文献9)。平成16年度はこれらのタンパク質から約20種類を選択して神奈川歯科大学の野崎直仁博士との共同研究によりそれぞれのタンパク質の末端ペプチドを化学合成しモノクローナル抗体の作成を試みた。10種類については抗体が得られた。MgcRacGAP/hMKLP-1,ASR2A,Rsf1(XAP8)/SNF2H用の五種類について現在解析中である。さらに、それぞれのセントロメア関連タンパク質の機能を調べるために、siRNAを細胞に導入し、目的タンパク質のノックダウンを試みている。ASR2AはsiRNA導入によりM期停止が引き起こされ、染色体分離に必須であるが明かとなった(論文準備中)。
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