研究課題
基盤研究(B)
本研究では、近年アクチン線維の重合核形成促進分子として脚光をあびつつあるForminファミリー蛋白質の1つ、mDialを単分子スペックル解析することで、以下に示す新規のアクチン重合に駆動される分子移動装置の発見につながる大きな成果が得られた。まず、蛍光単分子イメージングにFormin蛋白質の1つ、mDialを分子ごとに可視化したところ、mDialのFH1-FH2が毎秒2.0μmもの高速で細胞内を分子移動することを発見した。この移動は微小管を壊しても変化なく、アクチン線維に作用する3種の薬剤によって完全に停止した。次に細胞において、アクチン作用薬投与時のmDialの速度変化を解析したところ、アクチン単量体の濃度を減少させる薬剤処理ではmDialの動きが徐々に同調して減速し停止したが、直接アクチン伸長を阻害する薬剤では、個々のmDialの動きは即座に、しかも様々なタイミングで停止した。アクチン線維の重合速度はアクチン単量体の濃度に比例するので、mDialの運動はアクチン重合端に沿った移動と考えられる。更にミオシン非依存性を確証すべく、我々は精製アクチン、プロフィリン、リコンビナントmDialを用い、蛍光顕微鏡下でアクチン線維伸長を観察した。アクチン線維は、ガラス面に固相化されたmDialに接した部位で伸長し、その伸長速度から、mDialが重合を続ける反矢じり端に連続的に会合することが実証された。以上の結果から、Forminファミリーはアクチン重合の力を利用した分子移動装置として、細胞内で働いていることが予想される(Science 303:2007)。引き続き、その分子移動が細胞内でどのように利用されるかについて、野生型のmDailの分子イメージングを中心に解析を現在つづけている。
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